次に、より現実的な多成分から成る宇宙モデルを考えよう。ここでは3種類の一様な成分、即ち
の質量(非相対論的粒子)、
の輻射(相対論的粒子)、
の宇宙定数(
)を含むFRWモデルを考える。この場合、宇宙の過去、現
在、未来の姿はどのようなものになるであろうか?
まず、これらの宇宙の成分は全て独立であると仮定する。また各成分の状態方程式パラ
メータ
は時間的に不変とする。すると、宇宙膨張を表すスケール因子
と各成分のエネルギー密度
の時間発展
は以下の方程式を解くことによって求めることができる。
この内、流体方程式は各成分に対して独立であるので、
がそれぞれ
定数であれば、1成分宇宙の場合と同様に
を
の関数として
解くことができる。
成分の現在におけるエネルギー密度
を用いると
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(5.14) |
とかける。つまり、現在
におけるエネルギー密度が分かれば、過去や未来の
エネルギー密度も計算することができるのである。
これらの解をフリードマン方程式に代入して微分方程式を解き、現在の曲率半径
、エネルギー密度
、宇宙の膨張率を表す
ハッブル定数
を与えればスケール因子の時間発展
が求まる。
さて、宇宙初期を除くと、エネルギー密度は非常に小さい値であるので、無次元の
密度パラメータを用いると分かりやすい。時刻
における各成分の密度パラメー
タは
である。計算に必要なのは
ある時刻における各成分の密度パラメータの値であるが、
ここでは現在
における値
を考える。さらに
ハッブル定数
が分かれば、宇宙膨張を表すスケール因子の時間発展
を完全に決定することができる。これらの密度パラメータを用いてフリードマン方程式を無次元化してみよう。時刻
におけるフリードマン方程式は
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(5.15) |
とかける。これを現在におけるフリードマン方程式
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(5.16) |
で辺々割ると、無次元フリードマン方程式
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(5.17) |
を得る。ここで
は現在の密度パラメータの総和を表す。
式(5.17)の左辺が
、右辺が
の関数になるように変数分離すると
次のような積分が得られる。
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(5.18) |
つまり、右辺を積分することにより
が求まる。逆変換すれば
が求まる。
一般の場合、式(5.18)の右辺の積分を初等的な関数で陽に表すことは出来ず、
数値的に求める必要がある。しかし、2成分の場合は解が比較的簡単に表せる場
合がある。以下、2成分モデルにおける宇宙の膨張の様子を調べていくことにする。