物質+曲率モデル

始めに、物質と曲率をもつ2成分FRWモデルを考えよう。このとき $\Omega_{tot,0}=\Omega_{m,0}$ $\Omega_{r,0}=\Omega_{\Lambda,0}=0$である から、式(5.17)は
\begin{displaymath}
\frac {\dot{a}^2}{2}-\frac {\Omega_{tot,0}H_0^2}{2a}=\frac {1-\Omega_{tot,0}}{2}H_0^2
\end{displaymath} (5.19)

とかける。ここでスケール因子$a$を位置座標と考えると、式 (5.19)は運動エネルギー$K$と重力ポテンシャル$U$の和が 力学的エネルギー$E$に等しいという1次元運動のエネルギー保存則を表している ことが分かる。重力ポテンシャル$U$$-1/a$に比例しているので万有引力によ る2体問題の場合と等価である。したがって、$E<0$即ち $\Omega_{tot,0}>1$であ れば、スケール因子$a$はある最大値に達した後に減少し、最終的には$0$になる。 言い換えると、宇宙はある時刻まで膨張を続けるが、ある時刻から収縮に転じ、 最終的には密度が発散し、つぶれてしまう。宇宙が完全につぶれてしまうこ とをビッグクランチと呼ぶ。これに対し、 $\Omega_{tot,0}\le 1$のと きは、永遠に膨張を続ける。膨張すると共に宇宙は冷えていくので、 これをビッグチルと呼ぶ。まとめると、宇宙の空間成分のガウス曲率が正なら ば宇宙はやがてビッグクランチを迎えるがガウス曲率が0若しくは負であれば宇 宙はビッグチルとなる。どちらの場合においても膨張の加速度$\dot{a}$は負、すなわち減速膨 張であることに注意しよう。