宇宙の階層性

宇宙と聞くと、月や太陽、夜空に輝く星々を思い浮かべる人が多い。しかし、これらの天体は 一様に空間中にばらまかれているわけではない。天体が多く群がる場所もあればほとんど天体を みつけることのできない場所もある。地球上の人間の分布と同じく、宇宙の世界にも天体が集まる 「村」、「都市」、「国家」がある。まず数十個から数十万個の星の集団を星団という。「すばる」 で知られるおうし座のプレアデス星団は散開星団の一種で数十個の若い星で構成されている。望遠鏡を 使うと数十万個の古い星が球状に集まった球状星団を観測することも出来る。次に多数の恒星や惑星、星団、 水素やヘリウムから成る星間ガスなどが重力で一つに集まっている大集団を 銀河とよぶ。星団を「都市」に例えるならば 銀河は「国家」に対応するかもしれない。特に我々が住む銀河を銀河系もしくは天の川銀河とよぶ。地球上 に様々な国があるように宇宙には非常に多数の様々な銀河がある。実はこれらの銀河の世界にも銀河が集まる 「村」や「都市」がある。数個から数十個程度の銀河の集まりを銀河群、数十個から数千個の集まりを 銀河団、数千個以上の集まりを超銀河団とよぶ。
我々がすむ現在の宇宙を10Mpcから100Mpc程度のスケールで「なまして」みよう。驚くべきことに、 多数の銀河の集団はあたかも脳の神経細胞のように「ネットワーク」でつながっているようにみえる。 脳の細胞体は銀河団、樹状突起はフィラメントと呼ばれる銀河の鎖に対応する。脳とは異なり壁のように 平面的ひろがりをもつ銀河の集団もある。壁やフィラメントによって囲まれる銀河の少ない領域をボイド とよぶ。これらの複雑な構造を宇宙大規模構造とよぶ。
 さらに大きなスケールで宇宙を「なます」とどうなるだろうか?なますスケールを大きくすればする ほど、目にみえる構造はだんだんと小さくなっていく。1Gpcを超えるスケールの三次元的な構造はまだ 全てが分かっているわけではないが少なくとも数百Mpcより大きな構造は現時点で観測されていないよう である。多くの宇宙論研究者は「われわれの宇宙は数百Mpcを超えるスケールでは一様で等方である。」 という仮説を信じている。これをコペルニクス的原理または宇宙論原理とよぶ。この仮説を信じること にすると、数百Mpcを超えるスケールでは宇宙はどの場所でも同じ密度でどの方向を向いても区別がつかな い「のっぺらぼう」であり、物理法則もどの場所でもどの方向を向いても変わら ないということになる。