曲率+物質+$\Lambda $モデル

次に曲率と物質と宇宙定数$\Lambda $を含む3成分FRWモデルを考えよう。 宇宙の空間的な曲率は、近年の観測からほぼ平坦であると考えられているが、 パーセント以下の精度で測ると、わずかにずれている可能性も残されている。 その場合、宇宙はどのような運命をたどるのあろうか? 式(5.17)から、
\begin{displaymath}
\frac {\dot{a}^2}{2}-\frac {\Omega_{m,0}H_0^2}{2a}-\frac {\Omega_{\Lambda,0}H_0^2
a^2}{2}=\frac {1-\Omega_{tot,0}}{2}H_0^2
\end{displaymath} (5.37)

が得られる。物質+$\Lambda $モデルと同様、重力ポテンシャルを表すのは
\begin{displaymath}
U(a)=\frac {\Omega_{m,0}H_0^2}{2a}+\frac {\Omega_{\Lambda,0}H_0^2 a^2}{2}
\end{displaymath} (5.38)

である。しかし、曲率がある場合、式(5.37)の右辺、 すなわち力学的エネルギー
\begin{displaymath}
E=\frac {1-\Omega_{tot,0}}{2}H_0^2
\end{displaymath} (5.39)

がゼロでないので、一般にスケール因子$a$の時間発展は異なるものとなる。

まず $\Omega_{\Lambda,0}>0$の場合を考えよう。このとき$U(a)$は、物質+$\Lambda $モデルと同様、

\begin{displaymath}
a=a_s=\Biggl(\frac {\Omega_{m,0}}{2\Omega_{\Lambda,0}} \Biggr)^{1/3}
\end{displaymath} (5.40)

で極大値
\begin{displaymath}
U(a_s)=-\frac {3}{2} \Biggl(\frac {\Omega_{m,0}^2\Omega_{\Lambda,0} }{4} \Biggr)^{1/3}H_0^2
\end{displaymath} (5.41)

をとる。しかし、力学的エネルギー$E$$E<U(a_s)$かつ$a_s>1$の場合、 ポテンシャル$U$の壁を乗り越えることができない。言い換えると、 宇宙の空間成分が正に曲がりすぎていると、物質間の引力が強すぎて宇宙は永遠に膨張す ることができず、いずれ収縮し、ビッグクランチを迎えてしまうのである。 また、 $a_s<1の場合$、ポテンシャルの向こう側$a>a_s$から極値に向かってやってきて、ポテン シャルを乗り越えることができず、向こう側に戻ってしまう解も存在する。 いいかえると、宇宙は初め収縮しているのであるが、ある大きさ$a_s$になると 収縮を止め、再び膨張し始める。これをビッグバウンスともいう。 宇宙定数による斥力によって、宇宙はゴムボールのように「弾んで」しまうので ある。 $E\gtrsim U(a_s)$はどうであろうか?この場合、宇宙は減速膨張の後、 ポテンシャルの極値をとる$a=a_s$あたりでその動きをほとんど止めてしまうであろう。宇宙は長い 間、「ほぼ静止」し、その後、加速膨張へ移行する。そのような宇宙を停留宇宙とよぶ。

次に $\Omega_{\Lambda,0}<0$の場合を考えよう。このとき、ポテンシャル$U$$a$と 共に単調増加するので、$E$の値によらずポテンシャル$U$の壁を乗り越えることができない。 つまり、宇宙はある時刻に静止し、その後収縮してつぶれてしまう。つまり宇宙 はいずれビッグクランチを迎える。