従来、四重像QSOー銀河レンズ系にみられる中間赤外(MIR)フラックス比異常は、視線方向のミニハローやレンズ銀河のサブハローによって引き起こされるものと考えられてきました。我々は約10億個の粒子を用いた超高解像度N体シミュレーションを実行し、光子のうけるレンズ効果を数値的に求めました。その結果、これらのフラックス比異常はハローだけでなく、周囲に比べて密度が低い「ミニボイド」による弱い重力レンズ効果によっても説明できることを世界で初めて示しました。ミニボイドの質量スケールは約10億太陽質量以下と大変小さく、他の観測手段では観測することは非常に困難です。今後、ALMA等のサブミリ波干渉計を用いた高解像度観測により、銀河より小さい質量スケールの構造(ミニハロー・ミニボイド)の宇宙論的進化を観測的に決定することが可能になると考えられます。