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Inoue Lab. 近畿大学
宇宙論研究室

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宇宙最大の低密度領域の発見?

ハワイ大学などを中心とした研究グループが、エリダヌス座の方向に観測史上最大規模の低密度領域(超空洞)を発見しました。彼らは赤外線で観測された(WISE-2MASS)銀河カタログと可視光で観測されたPan-STARRS1(PS1)銀河カタログを用いて銀河の視線方向の距離を測定したところ、地球から約400Mpcから1000Mpc(1Mpcは約326万光年)離れた領域に半径約300Mpcの超空洞を見いだしました(arXiv:1405.1566)。 今回の発見は、宇宙マイクロ波背景輻射の「コールドスポット」と呼ばれる異常に低い温度領域の原因がこの超空洞によるものである、という仮説(astro-ph/0602478 , arxiv:1005.4250)を裏付けるものとなっています。今から138億年前に出来た宇宙最古の「化石」であるビッグバン起源の光子が、超空洞に入るときと出るときで感じる重力に差があると、光子のエネルギーが変化します(重力的赤方偏移)。一方、この効果は、宇宙が減速膨張から加速膨張へ移行するときに最大となることが知られています。そのため、地球から約400Mpcから1000Mpc離れた超空洞を通った光はエネルギーを失い、みかけの温度が低下するのです。このような巨大な構造がどのようなメカニズムで出来たのか、今後の解明が待たれます。

銀河の密度ゆらぎの分布。青は低密度、赤は高密度を表す。横軸は銀経、縦軸は銀緯を表す。2つの図は、それぞれ視線方向の距離を表す赤方偏移 0.11<z<0.14と0.17<z<0.22の領域に対応(z=0.1が400Mpcに対応)。点線はそれぞれコールドスポットを中心とした角半径5度と15度の円を示す。黒線は宇宙マイクロ波背景輻射の温度(単位はマイクロケルビン)。(Istvan et al. 2014から引用)