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Inoue Lab. 近畿大学
宇宙論研究室

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ブラックホールの合体による重力波の検出に成功

アメリカを中心とした研究グループLIGOとヨーロッパを中心としたVIRGOの共同チームが2つのブラックホールの合体によって生じる重力波を世界で初めて直接的に観測したと、11日に発表しました。重力波とは、強い重力をもつ天体が運動することによって生じる時空の振動です。これまで多くの研究者が重力波の直接検出に挑戦してきましたが、その効果があまりにも小さいため、なかなか成功しませんでした。2000年代初めにLIGOチームは長さ4キロにもおよぶ巨大なレーザー干渉計をアメリカ大陸の離れた場所(ワシントン州、ルイジアナ州)にそれぞれ設置し、2015年にその能力をアップさせたアドバンスドLIGOを稼働させ、2015年9月14日、ついにその合体の瞬間をそれぞれのレーザー干渉計で捉えることに成功しました。このブラックホール連星はお互いにくるくると軌道上を回っていますが、重力波を出すことによって、エネルギーを失いながら段々お互いが近づいていき(インスパイラル)、合体するときにもっとも大きな重力波を放出し、その後、波の大きさが小さくなっていきます(緩和)。わずか0.1秒の間に起こるこれらインスパイラルー合体ー緩和の過程で生じる重力波の振幅と周波数の時間変化を、2つの干渉計が見事に捉えることに成功しました。これらから連星の全質量は太陽質量の70倍よりも大きいのに、連星間の距離はたった350kmである、すなわち、天体は十分に大質量かつコンパクトである、という結果が得られたのです。ブラックホール以外の既知のコンパクト天体では説明がつきません。また、この合体に伴って生じた可能性の高いX線が合体の0.4秒後にFermiガンマ線バースト検出器によって観測されました。ガンマ線バーストとブラックホールの合体の間には何らかの関係があるのかもしれません。また、長い間謎に包まれてきた大質量ブラックホールの成長過程やアインシュタインの一般相対性理論に関する理解が今後飛躍的に深まると考えられます。アインシュタインの一般相対性理論が提唱されて丁度100年目の2015年に、宇宙を照らす「新しい光」、重力波の直接検出がなされたことは大変意義深いものです。

 

重力波イベントGW150914の観測結果(左はワシントン州、右はルイジアナ州で観測)(最上段)と理論予測(第二段目)および理論との差(第三段目)。 Strainは重力波の振幅を表す。(Abott et al. 2016 PRL 116, 061102)