宇宙の大きさはどれくらいだろうか?人々が一度は考えたことが
ある素朴な問いに、現代の宇宙論はどのような解答を与えるのだろうか?
「宇宙の大きさ」という言葉は2つの意味を含んでいることに注意する必要があ
る。それは、宇宙の「見える範囲の大きさ」と「本当の大きさ」の2つである。
光の速さは有限であるので、宇宙の年齢が有限であれば、我々の見える範囲も
有限である。この見える範囲と見えない範囲の境界をホライズン(地平
線)と呼ぶ。しかし、見える範囲の大きさが宇宙の「本当の大きさ」と一致する
とは限らない。例えば、地球上に立っている人が見渡せる範囲は有限であるけれ
ども、地球の大きさは地平線を超えていることは明らかである。
実は宇宙の空間成分の曲率がゼロや負である場合も、有限な体積をもつ宇宙モデ
ルを考えることができる。そのような宇宙の空間はもはや一様等方でなく、
空間はある非自明な「形」(トポロジー)をもたなくてはならない。
その場合、昔の科学者が地球の大きさを測ったように、宇宙の「本当の大きさ」を測ることができるかもしれない。
本章では、まず宇宙の距離やホライズン、観測的に求まる2種類の「距離」
について説明し、次に、それらを使って宇宙膨張を観測的に制限する手法、
最後に宇宙のトポロジーの種類とその観測方法について述べる。
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